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根が深い。

ネアカとネクラな世界を行き来する陰陽師。

『なぜあの人は平気であなたを傷つけるのか』(春日武彦/著)を読んだ

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端的に言って、驚異的な文章。内容はもちろん、こんなすごい文章を書く人を発見できただけでも嬉しい。

 

昨年出版。これを書かれた時、65歳。知的で大きな器。カラッとしたテンポで湿度の高い言葉を選び、それがどこか素っ気ないのに配慮があって、あっという間に読めるから痛快。こりゃぶったまげた。

表紙からは想像もできないほどの爽快感に見舞われました。

 

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私はこの本に、加害者の心理構造理解を求めていたんです。淡々とした解説を。そしてそれは見事に叶いました。

 

期待を大幅に超えて面白かったのは、「人を攻撃することの根の深さ」や「加害者の持つ、心の弱さ」をしっかりと説明した上で放たれる、攻撃そのものへの全面的な否定。むごたらしいくらいに、攻撃者をこき下ろす筆者の姿勢。なんの躊躇も無駄もなく、美しいとさえ感じた。

 

・そもそも攻撃とは何か

・加害と被害の意識は同居する

・対象の選定に大した理由などない

と、経験と知見を織り交ぜて解説したと思いきや、一人一人の読書の中に居るであろう絶対的加害者を適確にあげつらってボコボコにけなすことで読書の自尊心を優しく背中から支えてくれている。

それは単に痛快であることを超えて、自分が攻撃された記憶への追想を促し、攻撃者への想像力を強く掻き立てる。

 

そして最後に読書が講じるべき対策をいくつか紹介している。私が心に残った二大対策をご紹介したい。

 

1.個別化する

2.パターン化する

(他にも「居場所をもつ、餌を与える、正気を保つ」などがあった。ぜひ本を読んでほしい)

 

1.個別化する

相手にしっかり向き合うこと。私が好きなやつ。しかし往往にして、攻撃者の根底にある救いようのない毒が、歩み寄った側である私たちの心理的視野いっぱいに拡がり、「加害者の被害者意識や晴れない気持ちに寄り添ってあげたい。人間としてのありざまを肯定してあげたい。けど結局潰れる」という展開に陥りやすい。まさに私。

 

2.パターン化する 

相手をパターン化して、「はい、こいつやっぱりクズ」と処理し、攻撃すらも観察することで痛みを低減するもの。

「はい、やっぱり来たー!」と相手の動きを予測する、一歩引いた冷静さや、皮肉さを用いた対策。罠に掛かっているところを助けた犬が、動けるようになった瞬間に噛み付いてきたとしても「あー!分かってたよ!お前みたいに育ちの悪いクソ犬は、そうでなくちゃな!」くらいに思うという展開。

 

この相反する2つの思考展開は、傾向があるそうで、個別化しやすい人は意識してパターン化したほうがよいらしい。逆の傾向もまた然り。

 

この本の良いところは、まず1つ目は、加害者の心理構造の根の深さに言及して理解を示すため、加害者に想いを馳せる余裕を説教臭くなく与えてくれること。

2つ目はそれでいて、今この瞬間の(コミュニケーションを目的としない、理不尽な)攻撃を無効化する作法を指南している点にある。

この思考の両立が可能であることを、この一冊が体現している。

 

ある意味、心の五輪書みたいなもんなんじゃないか。

 

大興奮で、引き続き、春日武彦氏の書籍を2冊も図書館で借りた。楽しみだ。調べたら小説も書いていらっしゃった。これも気がむいたら読んでみよう。