頭の中で、再会した。
たったいま、急にだった。眠くはない。目も開けている。少し遅いお昼ご飯を食べ終えたところだった。いきなりこんな映像が頭に飛び込んできた。
百貨店のどこかのフロア。少し古い、新宿駅の京浜百貨店?天井が低くて、ちょっと人が多い。
エスカレーターで上がって、どこかのフロアに着いた。進んでいこうとすると、向こうから人が来る。
東京で働いていた時の会社の社長だ。
この人とこじれて、私は会社を辞めた。他にも色々重なって、うつになった。最後まで分かり合えなかった。
私は大きく息を吐き、背筋を伸ばした。
相手はこちらに気づいているだろうか、無視するだろうか。この間、2秒。まだ目が合わない。しかし、まっすぐこちらに向かって来る。
敢えて脇によけず、少し深く会釈をした。
もうわからない。なぜか、私は声に出した。
「お久しぶりです」
相手は気づいた。
「おー!ひさしぶり!元気!?」
笑っている。そう、この人は無邪気で明るい。そして別のシーンでは、憑物がついたようにキレる。
「いえ、いま無職で。その節はご迷惑おかけしてすいませんでした」
あまり申し訳ないとは思ってないけど、この場を終えるために、それ以外に言うことはなかった。なぜ声をかけたのか。恐らく、対等に会話したかったのだ。なぜ、「いえ」と否定したかったのかも、言葉を発して0.1秒後には、そんな自分を分かってあげられる。
「そうか!じゃ、頑張ってね」
どこまでいっても寂しい人だった。でもこれで別れを告げられたような気がした。
良い再会だった。
脳が汗をかいたのか、とても眠い。ちょっと寝よう。